秘密の恋は1年後
聞かせてもらえないと思っていたので、当然のように私の頬も熱くなってきた。
手を扇子代わりにして、パタパタと顔の前で風を起こすけれどあまり効果はなさそうだ。
「春巻きも美味しいですよ」
「……あぁ」
二本目の缶ビールを開けて、片手で春巻きをつまんだ彼は、真正面を見つめている。
……かわいい。
不器用ながらも、なんとかして私の要望に応えようとしてくれた彼を見ていたら、くっつきたくなった。
「なんだよ」
「甘えたくなったんです」
「また子供に見られるぞ」
「いいですよ、私は別に」
彼の左側に寄りかかるように軽く体重を預ける。
ほのかに香るグリーン系の香りと彼の温もりが、じんわり染み込んでくるみたいだ。
「私は、尚斗さんの全部が好きです」
どうしても言いたくなって呟いたら、缶ビールを唇に当てたままで彼が止まっている。
「尚斗さん?」
「……そんなの、当然だろ」
返された言葉はかわいげがないけれど、彼なりの強がりでさえ愛せる自信がついた。