秘密の恋は1年後
「美桜ちゃん、またあとでね!」
隙をついて駆けだし、尚斗さんの背中を追う。
私の片想いを知っている彼女の目には、おそらく社長を追いかけているだけに映っただろう。申し訳ないけれど、いつか話せる時が来るまでは、気付かないでいてほしいと思った。
姉に打ち明けたとして、口外することはないとしても、やっぱり尚斗さんとの約束は守りたいからだ。
「千堂社長」
後ろに並んで声をかけると、振り向いた彼は長年片想いをしてきた〝千堂社長〟の顔で微笑み返してくれた。
「お姉さんと話さなくてよかったんですか?」
「はい、大丈夫です」
「約束を守ってくれているようで、ひと安心です」
さり気なく釘を刺してきた彼を見上げたら、ちょうどエレベーターが到着して順に乗り込んだ。