秘密の恋は1年後
しばらく舗装された並木道を走り抜け、別荘地の入口へと右折した。
「敷地内にホテルもあるんですか?」
どこまでも続いていそうな広大な森林に目を凝らす。
私の問いかけに答えず、尚斗さんは車を減速させて、小さなログハウスの前に停めた。
「ちょっと待ってて」
「はい」
彼は車を降りて、目の前のログハウスに入っていった。
横並びで、他にも四台ほどの車がある。そのうちの一台は、〝管理棟見回り車〟とシールが貼ってある軽自動車だ。
おそらく、彼が入っていったのは管理棟なのだろう。
ホテルではなく、コテージに泊まるのかな。今は宿泊予約を確認しに行ったのかもしれない。
そうこうしているうちに、尚斗さんが戻ってきた。鍵とクリアファイルに入った書類を持っている。
「コテージを予約していてくれたんですか?」
「んー、まぁ、そんな感じかなぁ」
含んだ言い方をされて、彼らしくないなぁと思いつつ、きっと行けばわかるのだろうとそれ以上の追及はやめた。