秘密の恋は1年後

 大小様々、海外の雰囲気を漂わせる別荘が庭木で間隔を取って建ち並んでいる。


「いい風ですね」
「そうだろ? リフレッシュするには最高だと思うよ」

 窓を開けて、ゆっくりと走る車に入ってくる清々しい風を楽しむ。

 彼の話しぶりから、今まで何度か来たことがある様子だ。
 もしかしたら、葉書を送ってきていた過去の恋人とも来たのかもしれないけれど……それは、もう考えないでおこう。
 だって、この休みは私の誕生日デートでもあるんだから!


「よし、到着」
「……ここ、ですか?」
「そうだよ」

 さらに五分ほど走ったところで車を停めた彼は、先に降りて後部座席からふたり分の荷物を持ち、ドアを閉めた。目の前には、大きなウッドデッキがある真っ白な外観の別荘がある。

 他に二棟、向かって右側に庭を囲むように建っていて、その前にも車が停められていた。
 三棟とも雰囲気は違うけれど瀟洒で、周りの別荘よりもひと回り大きく、敷地が広い。

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