秘密の恋は1年後
「買い出しに行くんですか?」
「違うよ、親のとこ」
「えっ、えっ、ま、待ってください」
心の準備がなさすぎる。
愛斗さん夫婦に会った時も緊張したのに、突然ご両親に会うのはハードルが高すぎて、呼吸が浅くなってきた。
「待ってても、向こうから来ると思うけど?」
「そ、それはさすがに失礼かと」
「じゃあ、行くしかないよな?」
「は、はい……」
スタスタと歩く彼の後ろに着いて、一番右側の建物の前に立った。
「お邪魔いたします……」
「そんなにかしこまらなくていいよ」
尚斗さんは〝ただいま〟などの在宅確認もなく、玄関で適当にドライビングシューズを脱いで廊下を歩いていく。
六畳弱はありそうな広い玄関で、脱いだサンダルと彼の靴を揃え、私も続いた。