秘密の恋は1年後
まっすぐ伸びる廊下は、途中で右に枝分かれしている。
さらに彼について行くと、開け放たれたガラス戸の奥へ入っていった。
「あら、おかえりなさい」
「あぁ」
ぶっきらぼうな返事をした彼の背中から、控えめに様子をうかがう。
洗練された華やかさを纏うマダムは、間違いなく彼の母親だろう。
「お邪魔しております。麻生まひると申します」
「あなたがまひるちゃんね! ずっと会いたかったのよー!」
「わっ!!」
尚斗さんを押し退けてきたお母様に、突然ギュッと抱きしめられて息が止まった。
にこにことした微笑みは、愛斗さんや尚斗さんによく似ている。それにしても、近くで見れば見るほど美人だ。
癖のないストレートヘアがさらりと動き、若々しさを感じる。
「結衣ちゃんが、尚斗にフィアンセができたって教えてくれて、それからずっと会いたかったのよ!」
「わ、私にですか!?」
「ええ、そうよ」
テンション高く話しかけてくれる彼の母親は、もう一度私を抱きしめてきた。