秘密の恋は1年後

「まひるちゃん、本当に尚斗でいいの?」
「えっ、あ、はい……」
「素直じゃないし、優しいんだか意地悪なんだかわからない子供っぽい男よ?」
「……うるせーな」

 尚斗さんが口を挟むと、ようやくお母様が私を解放してくれた。


「ほら、不良みたいな口のきき方をして。お母さんがお嫁に行くなら愛斗がいいわ。あ、でも一番はお父さんね」
「わかったから、ちょっと紹介させてくれる?」

 尚斗さんが仕切り直すと、コの字型の大きなソファセットから彼の父親と愛斗さん夫婦が腰を上げた。


「父親の隆司(りゅうじ)と、母親の百合子(ゆりこ)」

 黒いワイシャツと細身のデニム、白髪交じりのロマンスグレーが似合う、若々しくスタイリッシュなお父様と、ベージュのサマーニットに白いパンツを合わせたお母様が改まって並ぶ。


「……こちらが麻生まひるさんです」

 尚斗さんがそれぞれに顔を向けて紹介してくれて、私は丁寧に頭を下げた。

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