秘密の恋は1年後
「俺たちは?」
「兄貴たちは省略」
「……まったく、お前たちは。きちんとなさい」
兄弟の掛け合いにぷっと笑いそうになっていると、お父様が口を割った。
高身長と優しい雰囲気は、彼らに受け継がれていると感じる。目元に小さなほくろがあるから、尚斗さんはお父様に似たのだろう。
「麻生さん、ようこそいらっしゃいました。尚斗の父です。こんな息子ですが、どうぞよろしくお願いしますね」
「っ、は、はい! こちらこそよろしくお願いいたします」
「……うん、いいお嬢さんだ。尚斗にはもったいない気もするね」
「そ、そんな!」
大して話してもないし、会ったばかりなのにお父様が高評価をくれるものだから、心から謙遜してしまう。
私はどこにでもいるOLだし、自慢できるような特技もなければ、仕事のスキルだって発展途上もいいところ。
社長である尚斗さんに見初められたのも奇跡のようだし、そもそも片想いで満足していたのだから。