秘密の恋は1年後
「あっ、私もお手伝いします!」
お母様と結衣さんが並んでキッチンに入ったので、声をかける。
「まひるちゃんはゆっくりしてて。あとで手伝ってもらうから、お願いね」
「はい。ありがとうございます」
もっと堅苦しい感じかもしれないと思っていただけに、ご両親の温かくて穏やかな人柄に随分と救われた。
一面大窓のリビングは見晴らしがいい。庭の向こうに浅間山が見え、シラカバなどの樹木が緑色の額縁になっているようだ。
話を聞くと、お父様は七年前から大手フィナンシャルグループのCEOを務めていて、お母様とは若い頃に職場で知り合い、そのまま結婚に至ったらしい。
愛斗さんたちも希望があれば入社させることもできたけれど、本人たちが野心溢れる性格だったので、今となってはそれぞれの道で花開き、日々奮闘しているのを眩しく思うと語ってくれた。
輝かしい千堂家の経歴に、ため息の連続だった。
結衣さんもきっと緊張しただろうなぁ。
でも、一家の様子を見ていると、私以上に歓迎してくれたのではないかと想像がついた。