秘密の恋は1年後
星月夜、彼の愛
お盆休み明けは慌ただしい。
数日分のメールチェックや引継いでいた業務の確認のほかに、通常業務や今日中にやらなくてはいけないこともある。
さらに、来客予定も入れていたので、休み明けの一日目はとてもタイトだった。
「お土産です。チョコレートなんですけど、よかったらどうぞ」
「ありがとう! どこに行ってきたの?」
「軽井沢です」
帰宅前に、給湯室の冷蔵庫で冷やしておいたお土産のチョコレートボールを同僚に配る。
仲よくしてくれている先輩に聞かれて答えると、すぐに包みを開けて食べてくれた。
「軽井沢なら私も行ってたんだけど、会わなかったね。アウトレットに行ったりしたけど、麻生さんは?」
「あ、私も行きましたよ」
危うく鉢合わせする可能性があったなんて……!!
普通に受け答えをしつつ、内心はハラハラする。
席に戻って、帰り支度を済ませてから人事部を出た。
どこにいたって、不可抗力で知られてしまうこともあるんだなぁ。気を付けていてもどうしようもない時があるってことか。
「……心臓に悪いなぁ」
ロッカールームでバッグを取って、エレベーターを待ちながらぽつりとつぶやいた。