秘密の恋は1年後
秘密の恋は1年後

 街はすっかり冬の装い。
 行き交う女性の足元にはブーツの出番が増え、呼吸が真っ白に染まって消えていく。

 年末年始を前に、我が社も多忙を極める師走は、人事部のスケジュールも年末調整や賞与にかかわる担当者が特に多忙で、部内で手分けして協力し合う毎日だ。
 先日の忘年会では、部長がお子さんが待っているからと一次会で帰ってしまったけれど、二次会は気の合う仲間でカラオケに行ったりして、和気藹々とした雰囲気がとても楽しかった。


 尚斗さんは来期で社長職二年目を迎えるとあって、関係先への挨拶や会合、業界の忘年会などの季節的な予定が目白押しで、ここのところ一緒に夕食を食べられたのは週末だけ。
 井浦社長の後継として抜擢されたからには、ここで社の評判も業績も落とすわけにはいかないと、日々奮闘しつづけている。


「それでは、みなさんよいお年をお迎えください」
「麻生さんも、よいお年をー!」

 年内最終出勤日。
 同僚と一緒に社屋のエントランスまで降り、挨拶をしてからそれぞれ帰路に就く。

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