秘密の恋は1年後
「一度しか言わないから」
「は、はい」
上司からの指示をしっかり聞くように、集中して耳を傾けた。
「俺には、お前しかいない。結婚しよう」
しんと静まり返ったリビングに、沈黙がくっきりと浮かびあがる。
突然のことに驚きが隠せず、聞いた言葉を頭の中で二、三周させる間、何度も何度も瞬きをして彼を見つめた。
耳の先まで真っ赤な尚斗さんも、私を黙って見つめ返している。
「あの、もう一回いいですか?」
「一度しか言わないって言っただろ……」
片手で顔を覆って隠してしまった彼は、間違いなく照れているのだろうけれど、私もドキドキしてたまらないのだ。
「あぁ、もう!」
「わっ!」
不意を突いて抱き寄せられ、身体がぶつかって息が一瞬止まった。