秘密の恋は1年後
予想通り、母は彼を見るなり頬を染めつつも丁寧に対応し、美桜ちゃんもきちんと並んで挨拶をしてくれた。
父は、最初こそ気難しい感じだったけれど、話していくうちに尚斗さんと仲よくなってしまい、夏になったら軽井沢に招待すると言われて上機嫌だった。
あんなに嬉しそうな父の顔を見れるとは思っていなかったので、感動して泣きそうだった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
リビングで手帳を広げていると、尚斗さんが帰ってきた。
年が明けてから、彼は相変わらず忙しくしている。だけど、年末に比べたら帰ってくる時間が早くなった。
「まひる、そろそろ社内でも公にしようと思うんだけど」
「っ……はい」
リビングに入るなり、彼が言った。
とうとうその時がきたかと、手にしていたグラスのお茶をごくりと飲む。
「まだ早いなら、改めるけど。どうする?」
「あの、本当に大丈夫ですか? 私のせいで、周りが仕事をしづらくなるのは嫌なんです」
「大丈夫。直接報告するのは役員だけで、あとは自然と知られていくのを待つから。今まで通り、仕事をしてくれたらいいよ。俺が全部責任取るから」