秘密の恋は1年後
――三月。
春の陽気が風に乗って感じられるようになった。
来月から働く新入社員を迎えるための準備に追われつつ、期の節目を目前にして、今年も各役員と異動のある社員には必要な書類の対応をお願いしていて、その回収とチェックにも時間を割いている毎日だ。
つい先日、初めて尚斗さんと話した一年前と同じ日に、無事入籍を済ませた。
挙式はまだ未定だけど、遠くないうちに挙げる予定ではある。
そして、もうしばらくは働きたいという私の意向を汲んで、会社では麻生姓を名乗り続けることになった。
そのせいか、今のところまだ社員には、婚姻関係を知られていない。
尚斗さんは、来月になったらきちんと社内報で報告すると言っていたので、そのあとの女性社員の反応が気になるけれど、もう過去を振り返ったり、自信がないからと俯いてしまうのはやめた。
これからは、尚斗さんとふたりで手を取り合って、日々を充実させていくと決めたから。