秘密の恋は1年後
「俺も社長になったばかりで落ち着かないから、もう少ししてからきちんとしようと思ってる」
「えっ、あの……」
「尚斗もやっと身を固める決心をしたか」
訳が分からず、社長に問いかけるけれど完全に無視されている。愛斗さんはなぜか理解を示しているし、結衣さんは楽しそうだ。
「尚斗が彼女を紹介してくれたのは初めてだな。父さんたちにもいずれは会わせるんだろ?」
「気が早いって」
「いい機会だから、自分の家に帰れ。これでやっと出ていってくれると思うと、せいせいするよ」
「出て行くって、どういうことでしょう?」
テンポよく交わされる会話についていけず、ようやく口を挟むと、愛斗さんと目が合った。
「尚斗は自宅ではなく、ここに帰ってきてばかりなんですよ。今回は二週間くらい住みついてますけど、放っておくと平気で何カ月も」
「えっ、そうなんですか?」
私の隣に座る社長を見ると、彼は何食わぬ顔でポテトサラダを食べている。