秘密の恋は1年後
「だって仕方ないじゃん。結衣ちゃんのポテサラ食いたいんだから」
「私は嬉しいですよ。食事も人数がいたほうが楽しいし、尚斗さんはいつも褒めてくれるし」
社長が愛斗さんに反論すると、結衣さんは少しも迷惑がっていないと後押しした。
「それはそうだろうけど……」
彼女の反応が予想外だったのか、愛斗さんはつまらなさそうにしてビールを飲んでいる。
「あぁ、そうだ。さっきエレベーターで上の永井さんの奥さんと乗り合わせたよ」
「あっ、お借りしたレシピの本、お返ししなくちゃ」
社長がそういうと、結衣さんは忘れていた用事を思い出したようだ。
奥さん同士で交流がある生活も少し憧れるけれど、私にはそれも縁遠そう。
こんな素敵なマンションで、誰もが羨むような旦那さんと優雅に暮らすなんて考えたこともない。