秘密の恋は1年後

 それに、私が思い描いていた千堂社長は、ひとたび仕事から離れると別人のようだ。
 もっと凛々しくて素敵な男性だと思っていたけれど、本を拾われてからというもの、ちょっと意地悪そうな一面を知ったり、こうしてお兄さん夫婦といると弟っぽさが垣間見える。

 思っていた人と違うからといって、彼への気持ちが変わるわけではない。でも、意表を突かれてばかりいるせいで、いつのまにやら緊張まで吹き飛ばされていた。


「今度から結衣ちゃんのご飯食べに来たら?」
「えっ!?」

 遠慮なしの社長の言葉にびっくりして、お箸を落としそうになった。
 社長はお兄さんの自宅に来ているだけだから気軽だろうけど、私は限りなく赤の他人だ。
 お兄さん夫婦ともついさっき会ったばかりだし、お互いの素性は知らない。

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