秘密の恋は1年後
そして、千堂社長は近寄りがたさはないものの、愛斗さんに負けず劣らずの麗しさだ。
見れば見るほどよく似ている兄弟だけど、左目の下にある小さなほくろは、彼だけの目印みたい。
今夜、一緒に過ごせてよかったなぁ。
プライベートの社長は、どんな人なのか想像ばかりだったけど、意外と親しみやすい人のようだ。
とはいえ、なぜ私と付き合う話になっているのかは、なにをどう考えても理解できそうにない。
当然、彼にそんな素振りはなかったし、彼の昇進が決まったのを機に、つい最近接するようになっただけ。
社長が女性を泣かせていたことだって、誰かに言うつもりはない。
私が愛読している本のことを口外しない代わりに、一緒に過ごすだけだったはずなのに、愛斗さん夫婦の自宅にお邪魔した上に、手料理までご馳走になるのは割に合っているのだろうか。
ここまでしてでも、私に口止めをするつもりなのかもしれない。
だとしても、交際する予定を仄めかされたのは、どうしてなんだろう。
空気を読んで聞くに聞けないのがもどかしい。