秘密の恋は１年後

　食事を済ませた後、約束通り結衣さんと連絡先を交換した。


「後片付け、私がやります」
「我が家では男性陣の役目なので、結衣とケーキを食べていてください」

　ご馳走になったお礼に申し出たら、愛斗さんに遠慮されてしまった。


「このケーキ美味しいんですよ。主人が時々買ってきてくれるんですけど、本当におすすめなんです」

　結衣さんはすっかり食後のスイーツタイムを始めていて、リビングのソファに座っている。
　兄弟が揃ってキッチンに立つ姿は、世の女子が目を爛々と輝かせるに違いない。しかも率先して家事を手伝ってくれるなんて素敵だと思う。



　それから三十分ほど経ち、あまり遅くならないうちにお暇することにした。
　社長は今夜も泊まっていくらしく、マンションの車寄せで見送ると言って、愛斗さんご夫婦と一緒に出てきている。
　結衣さんに食事のお礼をして、呼んでもらったタクシーに乗り込んだ。


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「それじゃ、これで帰って。またな」

　私の手にタクシーチケットを握らせた社長は、優しく微笑んでいた。