秘密の恋は1年後
初夏に現れし小悪魔
千堂家に突然招かれた夜からしばらく経ち、五月の連休が明けた。
毎年夏が前倒しになっている気がするのは、この時期らしからぬ暑さのせいだ。
社長とは何度か社内ですれ違ったけれど、日々の多忙はスケジュールを見れば一目瞭然。私がその場にいたことも気づいていなかったと思うし、一緒にいた沢村さんでさえ小走りで移動していることがあった。
それほど忙しくしているのだから、この前のことなんて忘れているだろう。
頭では理解しているつもりだけど、告白めいたようなことを言われたまま、その真意を問うことも叶わず、私はひとりで悶々と過ごしている。
ずっと好きだった千堂社長が、私なんかに恋をするはずはないと決めつけていた。
それが普通の考えだと思っているし、姉に打ち明けた時にも可能性はないと言ったら、『まぁ、そうだよね』と言われた。
誰もがそう思うのが当然。私が謙遜しているわけでもなく、姉が毒舌なわけでもなく、彼は普通の女子にとって高嶺の花なのだから。