秘密の恋は1年後

 自宅まで来てもらえると助かると連絡を受け、代々木公園を臨むマンションへやってきた。
 瀟洒な佇まいを目の前にしたら、社長に連れられてきた先月のことが鮮明に思い出される。

 あの日、彼は私と過ごしてどう思ったんだろう。
 告白のようにも取れる彼の言葉の真意は、いつか聞かせてもらえるのかなぁ。

 期待するだけ落胆が大きくなるって分かっていても、三年も片想いしているせいで、いい方に考えたくなる。


「こんばんは。麻生です」

 三階にある千堂家のインターホンを鳴らし、結衣さんの応答に挨拶を返す。


《どうぞお入りになってください》

 エントランスの自動ドアが開き、再び雰囲気のあるロビーで浮いている気がして、視線を泳がせる。
 初めてひとりで訪れると、私にとっては贅沢すぎる住まいに深いため息が漏れた。

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