クールな社長の耽溺ジェラシー
二章:
「んーっ! いい仕事できてよかった!」
達成感いっぱいに両手をグンとあげ、紺色の空を見上げた。ここはナイター照明が明るすぎて、星が確認できそうもない。
都心から車で一時間ほど走った場所にあるこの完成したばかりの屋外スタジアムは、海が近くて風に乗ってほのかに潮の匂いがするところだった。
観客席には屋根がなく、天候によって試合やイベントの開催が左右されるため、老朽化で大規模な修繕工事が決まったときに開閉式の屋根も取り入れられ、いまはそれが開け放たれていた。
「やっぱり、すごい……」
まだ芝もマウンドも整備されていないスタジアムの真ん中で、あたりをぐるりと見渡す。
基準を満たした明るさ、マウンドを照らす均一性、眩しすぎない投光器……さまざまな面で計算され尽くした空間ができあがっていた。
屋根を閉じたときの明るさも完璧、文句のつけどころがない。さすが正司さんが設計しただけある。
「……――ちゃん、こなっちゃん……!」
完成したスタジアムと照明の美しさに浸っていると、どこからか広瀬さんの声がした。
「こなっちゃん、なにぼーっとしてんの。現場確認終わり。グラウンドの整備が入るってさ」
遠く離れた出口で、小指くらいの大きさにしか見えない広瀬さんが、全身を使って私を手招きしている。その隣には正司さんが立っていた。
ふたりとも会社規定の作業着を羽織り、パンツは自分のものとはいえ足元は安全靴で、頭にはヘルメットという装いなのにどこかオシャレに見える。スタイルがいいからだろうか。
「わかりました! すみません、いま行きます」
手に持っていた照度計を作業着のポケットにしまい、数字を書き記した書類をしっかりと胸に抱くと、ふたりの元へ向かった。