クールな社長の耽溺ジェラシー
ビルのエントランスに降り、外へ出ると心地いい夜風が吹いていた。人通りの少ない道を歩いていると、ふと新野さんが足を止めた。
「そうだ、誤解は解いておかないとな」
「誤解って、なんですか?」
風が吹き、髪が乱れる。手で押さえながら訊き返すと、隣にいた新野さんが一歩こちらに近づいてきた。
「新野、さん?」
熱っぽい瞳と間近で目が合い、その強い眼差しに射すくめられる。
「あの言葉は本当だから」
「え?」
「小夏といると楽しいってこと。……ずっと、一緒にいたいって思う」
手を伸ばされ、今度は髪じゃなくて頬に触られた。あまりにも大切そうに見つめられ、胸が張り裂けそうなほど高鳴り、苦しくてたまらない。
「小夏、好きだ。仕事を一緒にするだけじゃ我慢できない、飯を食うだけでも足りない。……俺と付き合ってほしい」
「っ、新野さん……」
想いを伝えられるだけじゃなく、そばにいることを求められる。仕事仲間ではなく彼女として。新野さんの特別な存在になれる――。
「わ、私……っ」
なにか言いたいのに、言葉がちゃんとまとまらない。頭がふわふわと混乱していて、心臓が痛いほど胸を打つ。
おかしい、こんな自分、絶対おかしい。新野さんから目をそらしたいのに、そらせない。それどころか手を伸ばしたくなって、そんな自分が怖くなった。
誰に対してもこんな気持ち、もったことない。新野さんだけ特別に感じる。それに気づくと胸はもっと苦しくなった。
「私も、新野さんが好き……」