クールな社長の耽溺ジェラシー
六章:
伝えたい言葉はもっといっぱいあったのに、口にできたのはシンプルな想いだけだった。
「好き、新野さんが好きです」
大通りから一本奥へ入った路地は静かで、あたりに誰もおらず、私の声だけが響いていた。
「小夏……」
驚いたように固まっていた野さんは、我慢の限界とばかりに私を引き寄せた。
「に、新野さん、あのっ……」
たくましい胸板に抱かれ、大きな手で頭から背中をなでられると“好き”という想いがどんどん膨らんでいく。加速する想いに、自分でもうろたえてしまう。
「……おかしくなりそうだ」
熱っぽい息を吐きだすと、私の頭のてっぺんにキスをした。大切なものみたいに扱われ、胸が苦しくなる。
「お、おかしくなりそうなのは私です」
想いに気づいた瞬間、新野さんのすべてに反応するように体を作り返られてしまったみたいだ。
「そうか? いつも通り……じゃないか、少し顔が赤いな」
体を離し、私を覗きこんだ新野さんが頬をなぞる。指先のくすぐったさに首を縮こまらせると、小さく笑われてしまった。
「大切にするから」
「……はい」
嬉しさを噛みしめてうなずくと、とびきり優しく微笑まれる。近づく気配に瞳を閉じると、唇に触れるだけのキスをくれた。