クールな社長の耽溺ジェラシー
――現場に全員が揃うのはいつぶりだろう。
施工前に図面と現場を確認しながら四人で歩く。
主に新野さんと正司さんが話し合っていて、その珍しい光景に広瀬さんは目を丸くし、私はさっきからにやにやが止まらないでいた。
「ここは予定通りでいきます」
新野さんが次へ進もうとすると、いつもみんなにお任せ状態だった正司さんが「待って」と声をあげた。
「思ったより近くの建物からの影響がありそうだから、少し配光を見直そう」
話し合うふたりよりも、正司さんが意見する姿はもっと珍しくて、先輩後輩の関係が戻ったような光景に嬉しくなる。
「あのふたり、なんかあったのかな?」
橋のライトアップの一件でふたりは過去の話もでき、わだかまりが解消されていた。
そんなことをまったく知らない広瀬さんは、このあと嵐が来るんじゃないかと気が気じゃなさそうにふたりを見ている。
「さぁ、私はなにも知りませんけど」
あくまでしらを切る。
「お、その顔……実はなにか知ってんじゃねぇの?」
広瀬さんが茶化すように顔を近づけてくる。兄妹みたいに笑い合っていると、新野さんの「小夏、こっち」と呼ぶ声がした。
「次、行くぞ」
「あっ、はい!」
いままでだって名前で呼ばれていたのに、なんだかくすぐったくて頬がゆるんだ。