クールな社長の耽溺ジェラシー
私たちに声をかけて前を向いた新野さんは、夕陽を真正面から受けて黒髪の毛先にきらきらと光の粒をまとっていた。
うしろ姿だけでもかっこいいことがわかる。イケメンってたぶんああいう人のことをいう。
体格もいいし、足も長い、影さえスマート。
――あの人の彼女になったんだ。信じられない気持ちと、高揚感で浮き足立つ。
新野さんの隣には正司さんがいて、ぽつりぽつりと会話を交わしていた。
以前よりずっとやる気に溢れた姿は頼もしく、私が憧れた正司さんそのものだった。
私はこの背中をずっと追いかけたくて、そばで見ていたくてここに入社したんだ。
新野さんの図面を自分のものにした過去は認められないけれど、この気持ちは変わらない。
正司さんの作品で憧れたのはあの美術館や、新野さんの設計を元にしたものばかりじゃない。
それ以前の作品もすごく好きなので、早く自分の力に気づいてほしいと願った。