クールな社長の耽溺ジェラシー
次に向かった現場は私が提案した光のウェルカムマットを取り入れる施設だった。
「思ったより床のタイルが反射しそうだから、そこだけ調整かな」
正司さんのそばに行き、指示に耳を傾ける。資料に書き込みながらうなずくと、メガネの奥の瞳が柔和に細められた。
「でも、いい案だよ。すごくきれいだ。こういうの得意だよね、高塔さんは」
「ありがとうございます。少しずつ、自分の色みたいなものも見つけていきたいと思っていて……」
憧れの背中がある。
だけど、追いかけてばかりではただのコピーになってしまうから、いつかオリジナルを見つけなくちゃいけないともがいていた。
やっと形になってきたことが嬉しいし、それ以上に憧れの人から褒めてもらえることに達成感もあった。
笑顔で正司さんと話をしていると急に腕を引かれる。
「小夏、ちょっとこっち」
「えっ、新野さん!? ちょ、どうしたんですか?」
手を繋ぐ……とはいえない力強さで引っ張られ、さきほどの建物から少し離れた場所に来る。
「ここからもう一回、眺めておいたほうがいい」
立ち止まるとやっと手を解放してくれた。
「眺めて……って、図面の前に何回も確認しましたけど?」
どうしたんだろう、新野さん……。
疑問いっぱいに見つめると、新野さんは珍しく視線を泳がせた。