クールな社長の耽溺ジェラシー


「また余計な欲が湧きそうだ」

どんな顔でそんなことを言っているのか、気になって見上げようとすると「見るな」と低い声で制された。

その声に緊張して体を震わせると、肩に羽織っていただけだったジャケットが落ちそうになる。

「いま見られたら困る」

ジャケットごと長い腕で包み込まれる。衣擦れの音がして、新野さんの息が耳にかかり、頬から首筋まで熱くなった。

「に、新野さん……?」
「すごい、変な顔してるから……見るな」
「変な顔……?」

身を屈めた新野さんの肩から顔を出し、視線を横へ向けるとうなじが目に入った。

月明かりで照らされたそこはうっすらと赤くなっている。頬にあたる彼の耳も、熱いように感じた。

「もしかして、照れてるんですか?」
「照れてるよ。小夏といたら、こんなんばっかだ」

なにそれ、可愛い。声のトーンはいつもと同じなのに、照れていると本音を漏らす。

やっぱり、どんな顔をしているのか見たくなって「新野さん」と呼びながら離れると、表情もいつもと変わらなくて拍子抜けした。

「え、全然照れてないじゃないですか」
「そう思うならそれでいい」

とはいえ、視線をそらした瞳はどことなく熱っぽく、耳もやっぱり赤い。

「まさか小夏にからかわれるとはな」
「そんなつもりじゃないですよ。ちゃんと……想いを伝えただけです」
「あー……追い討ちとかない。……我慢の限界、越えそうだ……」


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