クールな社長の耽溺ジェラシー
「一番なんて興味なかったし、なりたいと思わなかったんだけどな」
今度は上を向かされ、キスをされた。チュッと音を立てると、端正な顔はすぐに離れる。
……名残惜しい。そう思うと、気持ちが止まらない。
もどかしい、もっとほしい……欲深い思いのまま見つめていると、新野さんはそれを見透かしたかのようにまたキスをくれた。
さっきより少し長い口づけに、目を閉じて幸せを感じる。
好き。新野さんが好き。バカみたいにそれしか考えられなくなる。それでもいい、バカでもなんでも、新野さんが好き。
「好きだよ、小夏」
私の想いに答えるように耳元で囁くと、さらにぎゅっと抱き締めてくれた。
「……これからもそばにいてほしい」
「はい」
照れて小さくうなずくと、腕を回して抱きついた。
いままで経験値も免疫もなかったのに、新野さんによって一気に更新されて幸せに満たされていく。
このままずっと抱き合っていたかったけれど、冷たい風が邪魔するように強く吹いた。肩を震わせると、新野さんはそれに気づいて私から離れた。
「帰ろう」
くしゃりと頭をなでられ、とびきり優しい笑みを向けられると「もう少しいたい」なんてわがままは引っ込む。かわりに手をつなぎ、車までの道を大切な一歩みたいにゆっくりと歩いた。