クールな社長の耽溺ジェラシー
八章:
車へ乗り込むと、少し遠回りをしながら私のマンションまで送ってくれた。
入り口の前に車をつけてくれたので、窓からマンションのオレンジ色のぼんやりした明かりが車内に入り込んでくる。
「ありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」
気恥ずかしさであまり顔を見られず、軽く頭を下げて車のドアに手をかける。出ようとした瞬間、反対側の腕を取られ、思わず振り返ると熱っぽい瞳と目が合った。
「に、新野さん……?」
「帰したくない」
「えっ……」
思考が真っ白になり、言葉がなにもでてこなくなる。
さっき正司さんに勝って……というけじめの言葉を聞いたのに。そもそも、私の心の準備もできていない。
戸惑っていると「ごめん」と謝られた。
「わかってるから、ちゃんと。約束は守る」
緊張で震えていた私の手を持ちあげると、甲に唇を寄せる。王
子様が求婚するようなキスをすると、そのまま鼻先をすり寄せ、顔を動かして頬をくっつけた。
大きな犬が甘えているみたいな仕草に私は釘付けになる。
「帰すよ、今日は」
「きょ、今日は……ですか」
「今度は帰さないから」
私の手をぎゅっと握ったまま、まっすぐに見つめられる。大胆な宣言に、痛いほど胸を打っていた鼓動はさらに大きく跳ねあがった。