クールな社長の耽溺ジェラシー
「え、正司さん……? 珍しいな。……もしもし、お疲れさまです」
疑問に思いながら出ると、あのあと向かった現場で変更したい点が見つかったらしく、明日の朝イチにそちらの打ち合わせを開くということだった。
「予定、変更します。ありがとうございました」
元々入れていたスケジュールは内勤だったので、後回しにすれば問題ない。頭の中で予定を組み立てて電話を切ると、うしろからがっしりと抱き締められた。
「えっ、に……新野さん?」
肩を包み込むように腕を回され、背中に新野さんの体温を感じる。
「さっきの、正司さんだろ」
耳元で低く甘さを帯びた声で訊かれ、ゾクリと背筋が粟立った。
「あ、はい……で、でも、仕事の話で……」
「ああ、わかってる」
腰を屈め、うなだれるように私の肩口に額を押し当てた。
「はぁ……情けない」
「え? どうしたんですか?」
この展開の意味がわからず、振り返るものの新野さんはうなだれたままで顔色がうかがえない。
「いや、かっこ悪いなって思って」
私に聞こえるか聞こえないかくらいのボリュームでつぶやくと、私を抱き締める腕にさらに力を込めた。
「かっこ悪いって、新野さんが……ですか?」
そんなことない。どこがかっこ悪いのか、なんでそう思っているのか。私には全然わからなくて首をひねるばかりだ。
「小夏と出会ってから、ずっとかっこ悪いな、俺」
「そ、そんなこと……」
「さっき電話の相手が正司さんだってわかっただけで、嫉妬した」
「し、嫉妬……」
まさか新野さんがそんな風に感じていたとは気づかなかった。