クールな社長の耽溺ジェラシー
「興味ないな。それより、いい仕事に出会えそうでそっちのほうが嬉しい」
珍しくほくほくとした様子の新野さんの手にはさきほどの関係者たちの名刺が数枚握られていて、新しい仕事のお誘いもあるようだった。
「この仕事……できてよかったよ。いろんなものが見えた気がする」
私の隣に並んで歩きだした新野さんを、広瀬さんが私越しに覗き込んできた。
「新野さんが見えたものって興味あるんですけど、このあとみんなで打ち上げしません? もうすぐ確認も終わりますし」
「悪い、べつの日で頼む。約束があるんだ」
私の手に、そっと新野さんの手が触れて小指を握られる。約束はここにあると言われているようで、胸がとくんと音を立てた。
「そっか。まぁ……疲れもありますし、俺もまだ仕事残ってるし。来月あたりにしますか」
「ああ、そのほうが助かる」
打ち上げはあらためて調整することになり、ライティングに問題がないこともわかったので、クライアントや関係者に挨拶を済ませると私たちは解散となった。
一度会社に戻り、作業着から私服へ着替えると急いでオフィスを飛びだす。
正司さんと広瀬さんはこれからふたりでべつの案件の設計を詰めるらしく、簡易会議室にこもっていた。