クールな社長の耽溺ジェラシー
「お待たせしました」
会社の前で待ってもらっていた新野さんに駆け寄ると、ふわりと穏やかな笑みを浮かべた。
「いや、全然」
出会ったばかりの頃は無表情のイメージが強かったのに、いつの間にかちょっとしたことで笑ってくれるようになった。
その変化が嬉しくもあり、ほかの人が気づいたらどうしようかと心配にもなる。
「小夏……髪、乱れてる」
走ったせいで跳ねてしまっていた髪を指ですいてくれる。
その仕草だけでいつも以上にドキドキして、反射的に体を固くしていると新野さんにくすりと笑われてしまった。
「いま、とって食うわけじゃないから安心しろ。……あとで、ゆっくりもらうから」
「そ、それを言われるとまた緊張するんですけど」
まさか私をもてあそんでいるんじゃないのかと見つめると、新野さんは困ったように笑った。
「参ったな、そんな風に見られたら俺も緊張する。とりあえず、飯行こう」
手を取られると、冷たい空気のなか、そこだけ熱くて新野さんをより近くに感じた。
大通りでタクシーを捕まえると、新野さんはさきほどライトアップしたあたりにある高級ホテルを運転手に告げた。