クールな社長の耽溺ジェラシー
まさか、いきなり? なにも訊くことができず、石像みたいに固まっていると膝の上に置いていた手に新野さんの手が重なった。
「夜景見ながら飯食いたいだけだから」
「あ、そ……そう、ですか」
肩の力が抜け、頬をほころばせると新野さんの手はそっと頭をなでて離れた。
二十分ほどタクシーに揺られてホテルのロータリーへ着くと、温かみのあるライティングがほどこされた高級ホテルへ入る。
エントランスはふっかりとした絨毯が敷き詰められていて、教育が行き届いたコンシェルジュに丁寧なお辞儀で迎えられ、ホテルの格調を現したような上品に輝くシャンデリアに気後れしてしまう。
こんなところ、仕事以外では縁がない。
新野さんは迷うことなくエレベーターへと向かうと、ボタンを押した。
気取らない新野さんは一緒にいてあまり社長っぽさを感じないけど、こういうこところでも落ち着いていられるのは普段からパーティーや交流会に出入りしているからかもしれない。
エレベーターのドアは少しも待つことなく開き、ゴールドをメインにした豪奢な姿を現した。
ますます気が引けて、自然と肩に力が入る。