クールな社長の耽溺ジェラシー
最上階ではないフロアにはレストランが一店舗しかなく、落ち着いた雰囲気のそこへ入る。案内されたテーブルは窓際で街の夜景が一望できた。
「あっ……あそこって……」
眼下に広がっている美しい明かりと人だかりを指差し、新野さんを見ると満足そうにうなずいた。
「ああ、ライトアップした場所だ。ここからならよく見える。上に行きすぎると、小さい点しか見えないし、どれだけ人が集まっているかも確認できない」
いろんなことを考えて、新野さんがこの場所を選んでくれたことが嬉しくて胸が震える。
「すごい……あんなに人が集まってる。それに、ここから見てもきれいにライティングできてる……」
多くの人が集まっているのはわかるけれど、なにをしているのかまではわからない。写真を撮ったり、眺めたり、きっと思い思いに過ごしてくれているのだろう。
「ありがとうございます……私にこの景色を見せてくれて」
明かりは人を集める。そのことをこれほど実感したことはなかった。企画を成功させた自信がさらに大きな自信へと変わった。
「小夏の喜ぶ顔が見たかっただけだから、気にすることない」
新野さんらしい言葉に頬が幸せでゆるみ、シャンパンが注がれた華奢なグラスを手にする。ふたりで「乾杯」と言い合うと、口へ運んだ。