クールな社長の耽溺ジェラシー


「さっき言った……いろんなものが見えたって話、覚えてるか?」
「はい、あれは……正司さんのこと、ですよね?」
「それもあるけど、小夏とのこともある。小夏がいてくれたから自分の違う面が見えて……今度の橋のライトアップもうまくいったから」
「わ、私がいたから?」

目を瞬かせて訊き返すと、新野さんはゆっくりとうなずいた。

「それに、部下からも最近近づきやすくなったとか言われた。その理由、小夏以外ありえないからな」
「私が新野さんに……」

一緒にいることでいい影響を与えられているなら、これほど幸せなことはない。

「で、そろそろ敬語と“さん”付け。やめてもらいたいんだけど」

顔を寄せ、どこか挑発的に見つめられる。

「う……はい、じゃなくて……うん。ゆ、夕……さん」
「さん、いらない」
「夕」
「ああ、それがいい」

名前を呼んだだけで、夕は蕩けるような笑みを浮かべた。その笑顔がもっと見たくて、意味もなく名前を呼ぶ。

「夕、夕……」
「ああ、慣れるまで呼んだらいい」

その言葉しか知らないみたいに繰り返していると、夕に抱き締められる。体だけじゃなく、心まで近くなったみたい。

「夕……好き」

自分からも夕の首に腕を回し、さらに体を寄せる。

好き、離したくない。怖さも緊張も全部越えて、夕とひとつになりたい。

自然とそう思えて腕に力を込めると、夕の手がうなじに回った。

「んっ……」

包み込むように支えられ、顔を動かして鼻先を擦り合わせるとキスをされた。私の心をほぐしていくみたいに、ついばむような口づけを繰り返される。

「小夏……場所、変えよう」


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