クールな社長の耽溺ジェラシー


照明を最小限に絞った寝室に入ると、黒を基調にした広いベッドの端に座らされる。

「……大丈夫か?」

たずねながら、隣に腰をおろした夕が唇を寄せてくる。大きな手の平が頭をなで、支えるようにうなじに触れると、キスの深さはぐんと増した。

「っ、夕……ちょ、っと……まっ……」

キスの合間にタイムを訴えるけれど、夕はその言葉を奪うように唇を重ねる。

「心配するな。適当に抱いたりなんかしないから。ちゃんと……大切に抱く」
「う、うん」

夕の言葉に嘘がないことはよく知っている。

「もうちょっと、安心してほしいけど……無理そうか?」

私の頬に触れ、至近距離で顔を覗きこんでくる。薄暗い中で黒い瞳が揺れ、すごく気遣ってくれているのが伝わってきた。

「……ううん。で、でも、いっぱいいっぱいっていうか……」

経験がないことを知られているのは重々承知だけど、全部を見せるという恥ずかしさに耐えきれず、しかもそんな自分が情けなくてたまらない。

火照る体を持て余し、どうしていいのかわからなくて泣きそうになりながら見つめると、困ったように視線をそらされた。

「……俺ってこんなんだったかな」

苦々しくつぶやく夕に「え?」と訊き返すと、苦笑を浮かべた。

「いや、恥ずかしそうにしてる小夏に、キスしたいとか抱きたいとかバカみたいなことばっかり浮かんでくるから性格悪くなったのかと思って。それか、頭おかしくなったかだな」
「な、なにそれ……」

そんなこと言われたら、ますます恥ずかしくなってしまう。怒りたいくらいなのに、ちょっと嬉しいとか思ってしまって怒るに怒れなくなった。


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