クールな社長の耽溺ジェラシー
十章:
「こなっちゃんさー、最近きれいになったよね」
新しくビルを建てる現場で測量をしていると、広瀬さんがおもむろにつぶやいた。
「え、そ、そうですか?」
「やっぱ新野さん効果かなー。あの人クールそうに見えるんだけど、しっかり愛してもらってるんだ。へぇー、ふーん」
「ちょ、私なにも答えてないんですけど」
あれからほどなくして、私と新野さんの関係は広瀬さんと正司さんにバレてしまった。というのも、四人で打ち上げをした際、つい「夕」と名前で呼んでしまったからだ。
やっぱり、仕事中は敬語と名字にさん付けにしておいて正解だった。
「新野さんが彼氏かー。幸せなんだろうなぁー」
「もう、早く測量して戻りましょうよ」
「あー、それ賛成。耐えらんないわ、この寒さ」
空は快晴でも風は冷たく、一月の寒さをいやというほど感じる。
加えて、高い建物が並んでいるところ。ビル風は強く、さっきからひとつにまとめた髪が乱れて仕方ない。
「しっかし、公私ともに順調だね。彼氏できて、今度は設計も任せてもらえて」
測量が終わると荷物を持ち、会社に戻るために駅へ向かう。今回の設計は広瀬さんと社内プレゼンで争い、私が勝ち取ったものだった。