クールな社長の耽溺ジェラシー


「あの、初めまして……閂建設で照明を担当しています、高塔です」
「広瀬です、よろしくお願いします」

ひとまず挨拶をしておかなければと広瀬さんとともに名刺を差しだすと、向こうも同じように名刺をくれた。

長めの髪に隠れてわかりにくかったけれど、間近で見ると切れ長の目は澄んでいて鼻も高く、色白できれいな顔をしていた。

格好と相まって、オシャレな雰囲気がある。

「大橋(おおはし)です。……社長、彼女さんかわいいですね」

真顔のまま夕にそんなことを話すから、驚いて口が開いてしまい、間抜けな顔になってしまった。

「あんまり見るな」

夕がさりげなく私の前に立ちはだかる。そこまでしなくても、お世辞でしかないのに。

隣に立っていた広瀬さんは「新野さん二世だ」と無自覚な発言をした大橋さんに称号を与えていた。

「社長の焦るところを見られて得した気分です」
「得?」
「仕事中はいつも真顔ですし、打ち合わせ相手がどれだけ美人でも顔色ひとつ変えないじゃないですか」

本当にいつもと違う夕を見て楽しんでいるのか、大橋さんこそ表情ひとつ崩さずしゃべっている。

「小夏以外興味ないからな」
「あの、夕……」

嬉しいけど、恥ずかしい。前に立った夕の袖をクイと引っ張って、もういいと抗議した。


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