クールな社長の耽溺ジェラシー


「もう週末、来ちゃってますけどー……」

部屋のローテーブルに置いたカレンダーの右端をこつんと指で弾き、頬杖をついた。

テレビから流れる夕方のニュースに独り言はかき消され、ついたばかりのため息も暖房の風に紛れていく。

本当なら土曜日である今日は、とびきりオシャレをして夕とできたばかりの複合商業施設でショッピングしたり、面白い建物だからそれについて話したり、ご飯を食べたり……いろいろと遊び回る予定だった。

なのにいま、私はもこもこのルームウェアを着て、ミルクティーを飲みながらテレビの前でまったりしている。それも、朝からずっと。

「夜は水族館……って約束してたんだけどなぁ」

テーブルに突っ伏して、残念な気持ちをいっぱいに吐きだした。

数年前にリニューアルされた水族館では、期間限定でイルミネーションが行われている。

魚やペンギンなどを楽しむだけじゃなくて、いろいろな配光が見られるということで楽しみにしていたし、イルミネーションに関わったのが夕の会社で、主に大橋さんが担当したというから余計にわくわくしていた。

なのに、この状況。

こんなはずじゃなかった。

あれから出張に向かった夕は順調に仕事をこなしたものの、べつの現場で部下がミスをしたらしく、いまはそちらで手直しを手伝っていた。


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