クールな社長の耽溺ジェラシー
「そうか? わかりやすいと思うけどな。光には興味あるけど他人には興味ないんだ」
「なるほど」
無愛想でハッキリとした新野さんらしい考え方に頬がゆるむ。
「なんで笑う」
「あまりにも新野さんらしくて」
笑いが堪えきれなくて肩を小刻みに揺らしていると、新野さんもあきれたようにフッと笑みを漏らした。
「俺らしくて笑う……って、結構失礼だけどな」
「すみません、でもいい意味で笑ってます」
「なら、いい」
「いいんですか?」
もっと怒られるかと思っていたので、きっぱりと言い放たれた言葉に肩の力が抜ける。新野さんを見上げると、目尻に優しいしわを刻んでいた。
「あんまり人を笑わせたことがないから、気分がいい。……それに小夏の笑顔もかわいいし」
「え、えっと新野さん?」
「他人に興味ないけど、小夏にはあるかもしれない」
「へっ!?」
言われ慣れていない言葉に、不覚にも声が裏返ってしまう。
そんな私に気づいているのかいないのか、新野さんが「あっち行くぞ」と指差すので、隣に並んでうつむきながら歩いた。
しばらく歩き続け、気がつけば現場からかなり離れたところまで来ていた。
「このあたりからの様子もカメラで撮ってくれ。あ、写真集をつくらない程度に頼む」
遠くから対象物を見ることもライトアップには欠かせないことだ。
「わ、わかってますよ」
新野さんから飛びだした甘い言葉と彼の優しい笑顔がまだ耳と目に焼きついていて、シャッターを押す手が少しだけ震える。
「今日、新野さんと来られてよかったです。ここに……純粋に遊びに来たいと思う人を増やす。それが今回の仕事だってあらためて気づきました」
真昼の景色を眺めながら、少しだけ夜のライトアップした街並みを想像する。
カップルと聞いたときはどうしようかと思ったけれど、難しく考えなくてもコンセプト通り、私らしく“人が集まる”照明にしたらいいんだと感じた。
ダメならやり直せばいい。何度でも。