クールな社長の耽溺ジェラシー
「ライトアップ期間中は人も増えるだろうけど、終わればいつも通りだろうな」
私の想い……というより、そもそものコンセプトが見事に砕かれる。
「えっ、そんなあっさり……」
「それでもこの企画でいい思い出ができれば、また足を運びたいと思う人も出てくる。そういう人がひとりでも多くできて、結果少しでも増えてくれればいい」
新野さんの言葉には裏表がなくて、現実的だけど温かさがあった。
最初に会ったときは、この無愛想な人が本当に新野デザイン事務所の社長かと疑ったし、がっかりもしたけれど、照明通りの人だった。
理想を押しつけるのではなく、いつだって誠実に人のことを考えている。
「新野さんって……優しいですね」
ずっと私に歩幅を合わせてくれたことも、腕を組むことを協力しようとしてくれたことも、全部含めて根が優しい。
「言われたことないな」
軽く口元をほころばせた新野さんは、なんだか嬉しそうに見えた。
「それより暑くないか?」
八月の太陽が降り注ぐ外はアスファルトの照り返しが強く、近くの建物は地面に濃い影をつくっていた。
「いえ、それが思ったより暑く……って、新野さんが日よけになってくれてますよ」
よく見ると私の影はすっぽりと新野さんの影に覆われていた。
「小さいな」
「色気がないって言われます」
主に広瀬さんに。
冗談めかして拗ねてみると、新野さんは頭にポンと触れてきた。