クールな社長の耽溺ジェラシー
新野社長といえば、三十二歳にして日本のシンボル的タワーや、国のトップが参拝するような神社のライトアップ、庭園や複合施設などのライティングを次々に手がけ、近い将来、国内だけではなく海外でも一番の照明デザイナーになるといわれている人だ。
自らが立ちあげた事務所はまだ設立三年目と若いのに、新野社長に憧れて入社した優れたデザイナーが集まり、たくさんの建築事務所が照明設計を依頼している。
その仕事ぶりはどれだけ受注が多くても手を抜かず、完璧で美しいという評判もあり、建築や設計とはまったく関係のない企業からもイベントのライティングを頼まれたりするほどだ。
実は私も、新野社長が手がけるライティングに注目しているひとりだった。
建物の構造を活かし、自然光を取り入れて設計された照明はどれも優しさに溢れていて、その美しさに心を動かされた。
照明設計には人柄が表れると考えていた私は、彼がデザインした建物を見ながらきっとすごく優しい人なのだろう……と想像し、尊敬している正司さんに似ているのではないかとさえ思っていた。
それなのに、その人物が……こんな無表情な人だったなんて。
「それでは、会議はこれで終了です。お忙しいなか、お集まりいただきありがとうございました」
広瀬さんの締めの挨拶で関係者たちが席を立つ。会議室を出ていく人々を私や広瀬さんたちにまじって、新野社長も見送っていた。
やっぱり笑顔はなく、ずっと真顔を貫いている。それなのに無愛想に感じられないのが不思議だ。……これがイケメンマジックか。