クールな社長の耽溺ジェラシー
「セ、セクハラしたじゃないですか!」
もしかして私相手じゃセクハラにならないと思っているのだろうか。声を荒げると新野さんではなく広瀬さんが慌てだした。
「セクハラ!? ちょ……コンプラ部に報告……って、その前に新野さん、なにしたんですか?」
「小夏の腰のラインが好みだったから触っただけだ」
「はい、アウトッ!」
悪びれる様子もない新野さんに、さすがの広瀬さんも声をあげた。ホント、アウトだ。
「……いいランプシェードがあったら触って確かめたくならないか?」
「ちょ、なんの言い訳してるんですか!?」
真顔で広瀬さんに同意を求めようとしている。そんな新野さんの行動は信じられないけれど、広瀬さんも腕を組んで「うーん」と悩みだしたのでそれも信じられない。
「えー、それ言われますとねぇ、触りたくもなるような……」
ひどい、私を守ってくれるんじゃなかったんですか。私のなかの広瀬さんの好感度は急降下だ。もう、ゼロ。マイナス。
「いえいえ、シェードはどんな明かりを作りだすか離れたところから眺めるべきですよ」
先輩だとか売れっ子照明デザイナーだとかは関係ない。いまは体を触った、触っていないの話をしているのだ。
胸を張って抗議すると、新野さんはじっと私を見つめてきた。
「そうか、じゃあ眺めることにする」
「し、視線! 腰を見ないでくださいっ!」
ただでさえ心まで見透かしそうなのに、その視線に耐えられるはずがない。
「新野さんって冗談かどうかわかりにくいんですから……」
どんな顔をしていいかわからず瞬きを繰り返す。気のせいか頬まで熱くなってきた。