クールな社長の耽溺ジェラシー


「面白いな、小夏は」

私を見つめたまま、クッと短い笑みを漏らした。電球が切れたと諦めた瞬間、やっぱり点いたときのような不意打ちの笑顔は優しくて、初めて見るわけじゃないのに惹きつけられた。

「コロコロ表情が変わるからつい目がいく。ライトを見るより面白いかもしれない」
「か、顔も見ないでください」

両手で顔を隠すと、新野さんが軽く笑みを漏らした気配だけが伝わってきた。

これからこの人と顔を合わせることがたくさんあるのに、この調子でやっていけるのだろうか。まっすぐな視線の裏ではどんなことを考えているのか、つねに気になってしまいそうだ。

隅っこで立ち尽くしていると、私を裏切った広瀬さんが素早くこちらへやって来て、新野さんに背を向けるようにしてこっそりと耳打ちしてきた。

「ちょ、こなっちゃん。新野さん、やばい。あれ、天然たらし? 超タチ悪い」

ですよね、本当にタチが悪い。

「ふたりで現場へ行ったときは“かわいい”って二回くらい言われました」
「うそっ。あの顔で言われたら大抵の女子は一発で恋に落ちるよなー。ずるいなぁ、イケメン」

自分もかなり整った顔をしている広瀬さんでも、悔しそうに唇を尖らせた。

うらやましがっているけれど、恐らく広瀬さんは自分がイケメンだと自覚しているので、新野さんのように軽々しく“かわいい”などとは言わない。

自意識過剰でもうぬぼれでもいいから自覚しているほうがいい。

自分の魅力に気づずかずに無自覚で女性に甘いことを言うなんて、言われたほうは期待していいのかどうか真意が掴めなくてたまったもんじゃない。

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