クールな社長の耽溺ジェラシー
九月に入っても暑さは和らぐことがなかった。
クーラーを強めに効かせた閂建設の会議室を使って、私と新野さんはまちなかライトアップのCGをつくっていた。
ふたりきりの密室だけど、あれからなにもされていないので一時の気の迷いだと思い、警戒することはやめた。
「このあたりはCGのほかに模型もあったほうがいいな。あと、ここも」
新野さんが図面を指差す。
前回の打ち合わせでクライアントに伝えた照明のイメージ。それをより具体的に示すための準備を、ふたりでしている最中だった。
「そこって……」
指を差された場所を見て、心臓がドクンと音を立てる。
「ああ、小夏が提案した光のウェルカムマットだ。床に四季の影絵を作るんだろ? 模型があったほうが絶対に興味を惹く」
光のウェルカムマットとは、人が多く出入りする門や自動ドアの前など、ウェルカムマットを敷くような場所に光を集める手法。
明るいと人はその中へ入りやすくなり、目を引く効果も生まれる。
今回取り入れようとしているビルは元々オフィスしか入っていなかったけれど、最近改装していくつか飲食店や家電メーカーのショウルームなどが入り、建物の持つ意味が変わってきたので思い切って提案してみた。
シンプルに四角い光やスポットライトを当てるより、影絵のように春なら桜、夏は花火、秋は紅葉、冬は雪の結晶……と映り込んだら面白いと思い、デザインを加えたけれどそのまま採用してもらえると思っていなかった。
「実現したら繊細できれいだろうな。……俺のなかにはないデザインだ」
図面をそっと指先でなぞっていく。自分の体をなでられているわけでもないのにくすぐったくなった。
「女性らしいな。小夏の意外な一面をまた知った気がする」
「やっと女性って見てくれましたか?」
「見てるよ、ずっと」
淡い笑みを浮かべ、私を見つめてくる。その視線に熱を感じて頬が熱くなった。