クールな社長の耽溺ジェラシー


「む、無理です。私の家にお願いします」
「ダメだ、風邪ひくって言っただろ」
「子どもじゃないんですから、大丈夫ですよ」

信号で車が停まると、新野さんが私のほうへ振り返る。

「風邪に大人も子どももないだろ」
「そ、そうですけど……」

ワイパーで視界がはっきりしても、すぐに滝みたいな雨がフロントガラスを濡らし、赤信号をにじませる。

「主導権、俺にあるんだけど」

カーナビのライトで見えた新野さんは瞳をいたずらに輝かせていた。

信号が青に変わるとハンドルを握り、アクセルを踏む。

「しゅ、主導権って……」

優しいとばかり思っていた新野さんの思わぬ発言に胸がドキリと鳴った。

景色が流れ、窓ガラスを叩く雨が激しくなる。

雨音か鼓動かわからない、ただこめかみにまでドクドクという音がうるさいほど響いていた。


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