クールな社長の耽溺ジェラシー
「見かけによらず、しっかり考えてるんだな」
「か、考えてると言いますか、好きなだけです」
「いいんじゃないか、それで」
どぎまぎしている私に追い討ちをかけるかのように、さらに瞳を細める。
普段めったに見かけることがない整った顔を間近で拝んだ私は、新野社長が離れても息さえうまくできずにいた。
なんだか正司さんに接していたときと違う。……というより、正司さんに対してだけ態度が違う。
「仲を深めているところ悪いけど、挨拶はもういいかな?」
新野社長のことがいまいち掴めないと思っていると、正司さんが間に割り込んで私の盾になってくれた。
「あんまり高塔さんをからかわないでもらいたいんだけど」
「し、正司さん……」
さっきまであんなに新野社長と関わらないようにしていたのに。私を守ってくれる背中にときめいてしまう。
「からかったわけじゃないですよ」
新野社長は不服そうに眉を寄せた。瞳にはしっかりと嫌悪が感じられて、その視線から逃れるように正司さんは腕時計に落とした。
「実はこのあと打ち合わせがあるんだ。僕はそろそろ失礼しようと思うんだけど」
「あ、そうですね。コンセプト練ったり、計画とかはまたの機会にしましょう。こなっちゃん、テーブルそのまんまでいいからモニター隅にやって、ブラインド下げといて」
「はい」
広瀬さんの指示にうなずくと、モニターを片づけてブラインドを下げた。会議室が人工的な明かりだけで満たされる。
「それじゃ、おさきに失礼させてもらうね。……新野社長」
正司さんは貼りつけたような笑顔で、あからさまに語尾だけ強調した。
「社長はやめてください。前のままで結構です。広瀬も……あと、高塔さんも」
去ろうとしていた正司さんを引き止めると、私を振り返る。
「え、わ、私も?」
勢いよく返事をすると、新野社長はクッと笑みをこぼした。
会議のときは笑いそうもない人だと思っていたのに、さっきから笑った顔を見ている気がする。しかもすっごく爽やかな。