クールな社長の耽溺ジェラシー
「ご飯行こうっていうから、もっと気軽なイメージだったんですけど……」
連れてこられたのは会員制のレストランで、しかも新野さんがオーナーと知り合いらしく、名前を告げると個室の中でも一番広くて見晴らしがいいVIPルームに案内された。
「私、お金払えるかな……」
一面のガラス窓からは絵画のように整備された中庭が見え、一瞬レストランにいるということを忘れてしまう。
私と新野さんしかいない部屋は静かで、霜降り肉を切り分ける手が緊張で汗ばんできた。
「心配するな、出させるつもりはない」
「そういうわけにはいかないですよ」
「ただ、食べてくれたらそれでいいよ。それとも、こういう店いやだったか?」
スマートな仕草でワインを口へ運ぶと、私を見つめてきた。お酒が入っているせいか、熱を孕んでいて艶っぽい。
「そうじゃないです。ただ、新野さんっぽくないかな……って」
「好きな女を口説くならこういうところがいいかと思っただけだ」
「すっ、好き……」
思わず、口へ入れた高級肉を噴きだしてしまいそうになった。
そうだった、新野さんは私を好きだと言ってくれていた。
忘れていたわけじゃないのに、目の前につきつけられるとどう反応していいかわからない。
「……新野さんは私をひとりの女性として見てくれているんですね」
「前から言ってる」
「あらためて、そう感じたんです」
正司さんも私を女性扱いしてくれたけれど、新野さんに扱われたときと違うと感じた。
いま、その理由がわかった。正司さんは私を大勢の女性としての括りでしか見ていなかったんだ。