クールな社長の耽溺ジェラシー
「なにそれ、わざわざ僕と戦おうとするなんて……僕なんか敵じゃないって言いたいの? 生意気だなぁ」
正司さんは嫌味な口調と笑みで、新野さんをいなした。
「俺と勝負してほしいんです」
「勝負って。それ自体、おこがましいと思わない? 閂が有利だっていうのに、負けることを想像していないんだ。……そういう強気なところ、昔から嫌いだった」
嫌いだと言われても、新野さんの表情はひとつも変わらなかった。
「嫌われても構いません。ただ、正司さんに勝ちたいんです」
力強い返事に、正司さんが一瞬固まる。真っ向から挑戦状を叩きつけられ驚いている……というよりは、どこか嬉しそうにも見えた。
「そんなの勝負しなくたって、わかるだろ。……きみのほうが実力あるよ」
「でも、小夏のなかでは正司さんが一番かもしれない」
自分の名前が出てドキリとした。正司さんは軽く首を傾げている。
「なんで、いま高塔さんの名前が出るの? もしかして、本気で警戒してる? 僕があの子の設計を盗むかも……って」
意地悪に口の端をあげた正司さんに、怒りと失望が込みあげてくる。
こんな正司さん見たくない。私が憧れた人は、いまどこにもいない。